キャブレター・インジェクションセッティングの基本と考え方
- 世はインジェクションの時代
- キャブレターやインジェクションってなんなんでしょう
- キャブレターとは
- インジェクションとは
- 燃調のセッティングの基本
- セッティングの幅
- ベストセッティングは必ずしもベストではない
- キャブレターのセッティング
- メインジェット
- スロージェット(パイロットジェット)
- エアスクリュー(パイロットスクリュー)
- ジェットニードルクリップ段数
- 他に調整ヶ所は沢山ある
- インジェクションのセッティング
- 基本の考え方は同じ
- インジェクションは明確なセッティングが可能
- 実際にセッティングするには
- 1:始動性~アイドリングからの吹け上がり~回転の落ち方
- アクセル開度40%~60%の調子を見る
- アクセル開度60%~全開域を見る
- 不調でなければあとは好みを追求
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世はインジェクションの時代
バイクが走るために必要なガソリン。
そのガソリンをエンジンに送っているのがキャブレター・もしくはインジェクションです。
現在は2サイクルのモトクロッサーなどを除き、新車のバイクはほぼインジェクション化されており、
気候や標高に合わせてセッティングせずとも、燃調を自動補正してくれるので
問題無く走るようになりました。
キャブレターであれば、スキー場のレースなどでは標高の影響を受け
セッティングが必要だったもので、便利な時代になったものです。
燃調に悩める人類の皆様こんにちは。
燃調神の寺尾です。皆様のバイクは燃調いかがでしょうか。
マフラー交換や吸気系のチューニングなど、
大幅に吸排気のバランスが変化した場合には、インジェクションと言えどセッティングをした方が良く走るようになります。
もちろん、キャブレターであれば猶更セッティングしないとマトモに走らないこともあるでしょう。
そんなわけで今日はキャブレター・インジェクションセッティングにおける
基本と考え方をお話します。
キャブレターやインジェクションってなんなんでしょう
まず、キャブレターとインジェクションですが、
役目は同じで、エンジンにガソリンを送るもの。しかし、その原理は異なります。
キャブレターとは
キャブレターは日本語にすると「気化器」と呼び、簡単に言えば霧吹きです。
空気を吸い込もうとするエンジンの負圧に引っ張られる形でガソリンを吸い出されるのがキャブレター。
インジェクションとは
インジェクションは日本語で「注射器」。
コンピュータ上で計算された適切な量のガソリンをエンジン内に噴射(注射)するのがインジェクションです。
負圧に燃料が引っ張られる形で受動的なのがキャブレター、
自ら燃料を噴射する形で能動的なのがインジェクションです。
ただし、やってることは同じなので
セッティングにおける考え方もある程度共通と考えて構いません。
燃調のセッティングの基本
ここからはセッティングの基本のお話に移ります。
燃調のセッティングでは、ざっくりこのように考えればOKです。
セッティングの幅
真ん中が理論上のベストセッティングで、右に行けば徐々に濃くなり、上限を超えるとプラグがカブり、エンジン停止となります。
(燃調が濃すぎてガソリンが気化出来ず、プラグの電極が濡れて着火出来ない状態のこと)
逆に、燃調は左に行けば薄くなり、こちらは上限を超えると焼き付き、エンジン破損となります。
上限を超えない範囲であれば、レスポンスが鋭くなったり、トルクのある走りにも出来ます。
この考え方はキャブレターもインジェクションも共通です。
ベストセッティングは必ずしもベストではない
便宜上、↑の画像ではベストセッティングと称していますが、
実際に走る際のベストというのは乗り方や好みで大きく変化します。
鋭いレスポンスで高回転を多用してキビキビと走りたい方、
低回転からトルクフルな走りで安定した走りをしたい方、どちらのセッティングも正解と言えるでしょう。
特にオフロードでは、数字的にベストなパワーのセッティングよりも、
体感的な速さを感じられるセッティングの方が良いタイムが出ることも珍しくありません。
「速そう」と感じることで上がったテンションが走りを変えるという、半分心理学のようなお話ですね。
キャブレターのセッティング
ここからは具体的なセッティングの方法についての解説です。
キャブレターのセッティングで触るパーツはいくつかありますが、
今回は大抵のキャブレターには付いている4つのパーツを解説します。
1:メインジェット
2:スロージェット(パイロットジェット)
3:エアスクリュー(パイロットスクリュー)
4:ジェットニードルクリップ段数
これらのパーツはアクセル開度に応じて担当する(影響する)範囲が決まっています。
なので、セッティングの際にはアクセル開度とエンジンの調子を見ながら
担当するパーツを変更・または調整します。
メインジェット
一番代表的なキャブレターのセッティングパーツがこのメインジェット。
番手を大きくすればガソリンの通る穴径が大きくなり、燃調は濃くなります。
逆に番手を小さくすれば、穴径が小さくなるので燃調は薄くなります。
メインジェットはアクセル開度50%~辺りに大きく作用します。
全域に作用してはいますが、アイドリング~アクセル開度50%以下の領域への影響は小さめ。
スロージェット(パイロットジェット)
エンジンの掛かりや低開度での走りに影響するのがスロージェット、もしくはパイロットジェットです。
キャブレターメーカーで呼称は異なりますが同一の物と考えて差し支えありません。
このジェットが大きくズレているとエンジン始動が困難になるので、
まずは濃い目(大きな番手)から試すと良いでしょう。
エアスクリュー(パイロットスクリュー)
エアスクリューとパイロットスクリューは担当範囲こそ、
アイドリングからちょい開け程度で共通していますが、エアスクリューは空気の量を調整していて、
パイロットスクリューはガソリン量を調整しています。
つまり、エアスクリューは開ければ薄くなり、パイロットスクリューは開けると濃くなります。
ここは勘違いされやすいポイントなのでご注意ください。
上記の通り、スロージェットと担当範囲が被っているので、
スクリューの調整でセッティングが出ない場合はジェットを交換する、というような形でセッティングします。
基本的には全閉から一回転~2回転半程度の範囲でセッティングが出なければ、
ジェットの番手を見直した方が良いかもしれません。
基本的に2サイクル用キャブレターはエアスクリューを。4サイクル用はパイロットスクリューが装備されていますが、
FCRキャブレターなど両方を備えたものもあります。
ジェットニードルクリップ段数
メインジェットに挿さっているジェットニードルの深さを調整するのがクリップ段数。
ジェットニードルの上部には横溝が複数掘ってあり、どこにクリップを挿すかでニードルの深さが変化します。
クリップ段数を上げれば薄く、下げれば濃くなる効果が得られます。
体感的には、吹け上がりの鋭さを調整するような感覚ですね。
他に調整ヶ所は沢山ある
ここまで解説した4つのパーツ以外にも、キャブレターには調整ヶ所が沢山あります。
ジェットニードルのストレート径、切り上げ角、加速ポンプなど色々・・・
とは言え、よっぽど大きく吸排気のバランスを変えなければ、4つのパーツの調整で概ね対応出来るはずです。
4サイクル用高性能キャブレターであるFCRキャブレターは多くの調整ヶ所を備えていて、
非常に細かなセッティングが可能ですが、一方でセッティングの迷路にハマりやすい側面もあります。
これが4気筒の4連キャブレターだと更に大変です・・・(^^;)
しかし、あくまで基本の考え方に忠実にセッティングを詰めていけば、調子の良いセッティングにたどり着けるはずです。
インジェクションのセッティング
基本の考え方は同じ
ここまでキャブレターのセッティングについて解説してきましたが、
インジェクションでも基本の考え方は同じです。
ただ、キャブレターでは機械的に部品を交換してセッティングしていたのに対し、
インジェクションではパソコンと繋いだり、専用の端末を操作したりと画面上の操作となります。
最近のYZ250Fや450Fはスマホセッティングが可能で、セッティング変更が非常にお手軽に。
キャブレターではセッティング変更の度に工具でアレコレ付け外しが必要でした。
場合によってはキャブレター本体を着脱する必要がありますし、
その為にタンクやサブフレームを取り外す必要があったりもします。
ジェットやニードルを買い足すにもそれなりにお金掛かりますしね。
それがボタン操作でポチポチやるだけでセッティング出来るんですから、楽な時代になったものです。
インジェクションは明確なセッティングが可能
キャブレターセッティングで悩みの種になるのが、調整ヶ所の効果範囲が重なるという点。
スロージェットとエアスクリューは効果範囲が大きく重なっていますし、メインジェットもニードルの効果範囲に重なっています。
こういう性質であるが為に、セッティングに「ぼかし」が生まれるのがキャブレター。
しかし、インジェクションは明確なセッティングが可能です。
メーカーにより調整ヶ所は異なりますが、基本的にはアクセル開度と回転数に対し、燃料の濃さを+-で入力するパターンが一般的。
これはとあるバイクのセッティング例です。
単純に言えばアクセル開度×回転数の132ヶ所のセッティングが細かく出来るということ。
もっと細かくセッティングが可能なものもあれば、シンプルなものもあります。
もちろんそこまで細かく考えなくても良いのですが、これはキャブレターでは難しいでしょう。
更に、インジェクションでは点火時期の調整も同時に行えるものが多くあります。
これはざっくり言えばレスポンスの鋭さ。
ただ、燃調の濃さの影響も受けるので、ここはキャブレターと同様重ねて考える必要がありますね。
実際にセッティングするには
実際にセッティングをする際には、以下のポイントに注目して進めると良いでしょう。
1:始動性~アイドリングからの吹け上がり~回転の落ち方
まずエンジンはすんなり掛かるか。キャブレターならスロー系が薄すぎるとエンジンが掛かりません。
逆に、多少濃過ぎても始動性は良いです。チョークと同じで濃い方が掛かりは良くなります。
エンジンが掛かるなら、アイドリングの安定性と、そこからチョイっと開けたフィーリングが良いか否か。
ボボボボッっと重ったるいようでしたら濃いかも、ストトトッと息つぎするようなら薄いかもしれません。
擬音が難しいのですが、実際に音で聞いていても、濃いか薄いかの判断に迷う場合はあると思います。
また、スロットルを離した際に回転はスムーズにアイドリングまで戻るか?
という点もチェックして下さい。薄すぎると、回転の下がり方がゆっくりになります。
この症状が顕著で、かつ古い車両だとインテークマニホールドに亀裂が発生して
そこから空気を吸い込んでいる場合もあったりします。二次エアーってやつですね。
アクセル開度40%~60%の調子を見る
キャブレターは通常、ニードル本体を交換するケースは多くはありません。
大抵はクリップ段数で済むと思いますが、こことメインジェットがアクセル開度50%程度の走りに影響します。
気持ちよく、レスポンス良く吹け上がるか?レスポンスが鋭すぎるなら濃くする=クリップ段数を下げる・またはメインジェットを上げることで
レスポンスがマイルドに・トルク感が出ます。
アクセル開度60%~全開域を見る
高回転域です。この辺りはメインジェットの独壇場なので考え方はカンタンです。
70%~100%の間でも気持ちよく加速してくれるか?
全開で息つぎしていないか?逆にボコボコしていないか?
黒煙吐いていないか?←濃いと黒煙が出やすい
不調でなければあとは好みを追求
問題なくエンジンが掛かり、アクセル開度全域で気持ち良く吹け上がるようであれば、
あとはセッティングのお好みという話になります。
繰り返しになりますが、空燃比上・シャシーダイナモ上のベストセッティングが本当のベストとは限りません。
滑りやすい路面であれば濃い目でマイルドにした方が良いかもしれませんし、グリップが良いソフト路面なら薄めでレスポンス重視が良いかもです。
ただ、勘違いちがちなのはマイルドなセッティング=疲れにくいという考え。
半分は正解なのですが、マイルドということはバイクの反応は鈍いので、
ライダーが積極的に動く必要があるということです。
つまり、マイルドなセッティングが逆にライダーには疲れやすいという場合もあるのでご注意下さい。
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